国際政治に関するメモ

勉強するにあたり面白かったものをメモとして残していきます。

国際政治における基本概念

はじめに

 

院試の勉強の一環としてずっと国際関係の本を読んでいます。

最近は猪口孝編著、『国際関係リーディングス』,ケネス・ウォルツ著『人間,国家,戦争』ジョセフ・ナイ著『国際紛争 理論と歴史』などを読みました。それらを読んだ上である程度まとまった知識をメモとして残し、整理をしたいと思い、この記事を書いています。

まず、国際関係論とは何か?

国際空間、つまり地球に存在する国々で構成される空間にて起こる事象を分析する学問であるとされています。例えば物理学では、モノが落ちるのは何故か?という疑問に対し、引力というものがあり、それの力加減は数字や文字で表すことができる…としています。

これは、昔の人間が何度も実験を繰り返し、もっともらしい法則のようなものがあると見抜き、出来上がっていきました。

では、国際関係論では、どのようにもっともらしい決まりを見つけるのでしょうか。

物理学や化学とは違い、国際関係論では実験というものが行なえません。

だから、過去の歴史を参照し、歴史の中の国際空間の事象から理論を生み出しています。以下、その唱えられる理論について、出来る限りまとめたいと思います。

 

どのような思想的な主張がなされてきたか

大きく分けて、「リアリズム」と「リベラリズム」が長く主張されていました。

これらは非常に長い歴史を持ち、21世紀になってもこの学問の主流をなしています。

以下、そのまとめです。

 

・前提

まず、国際空間は、「無政府状態」とよく言われます。このことが議論の大きな前提となります。

この概念は、通常、国の中には行政組織が置かれ、構成員の国民に対し法律やその他の規律を執行する機関が存在することに対して、国際空間においては、その構成員の国に対し、決まりや国際法を強要する組織は存在しないため、言われるものです。

確かに国際空間には決まりとして国際法が存在し、裁判所として国際司法裁判所が存在します。しかし、その裁判所の決定に従わせることのできる行政組織はありませんし、裁判所の決定を国は拒否することができる、とジョセフ・ナイは指摘しています。

(実際に、アメリカのレーガン政権はニカラグアとの紛争において、国際司法裁判所の意見を受け入れませんでした)

よって、国の中における法律や行政とは全く違う考え方をする必要があります。

この国内とは大きな違いを生み出す「無政府状態」をもとに、以下「リアリズム」「リベラリズム」が提唱されてきました。

・リアリズム

美術の世界では対象を忠実に描こうとする姿勢をリアリズムと言うそうですが、国際関係論では違います。

先述した無政府状態では、何かトラブルが起きたり、他の国と衝突が起きたりしても誰も助けてくれません。従って、自分で全て解決をする必要があります(自助)。

そのために、国の第一の目標は安全保障となり、皆が軍事力を整備するようになります。それが原因となり、国際空間で色々な事象が起きる、という考え方です。

また、この「事象」を起こすのは国家のみであり、その他の企業やNGOといったものは考えない、という特徴もあります。

リベラリズム

 上記のリアリズムに対して、リベラリズム(国際協調主義)と呼ばれる見方があります。

国際空間において、国と国の関係は、軍事力だけではなく貿易や人的交流、国際連合NGOといった、リアリズムだけでは捉えきれない存在がある、と主張する。

そして、それらを含めた上で国と国は強調できる…と考え、国際空間の事象を分析する、という考えです。

 

源流

以上のような考えはどこから生まれたのでしょうか。

人によって多少の差はあるようですが、主に1. ホッブズと2. カントの思想がその源流とされています。

日本だと、ホッブズ現代社会の教科書にも出てくるので知っている人も多いと思います。

 

1 ホッブズの世界 

猪口は'ホッブズの世界は暴力・権力の世界。

それらの競争での勝者が秩序を作り、無政府状態を脱する。

平和は勢力均衡などの外交によっても維持されるものの、基本は戦争によって獲得される'と述べています。

 

これだけではいまいちつかみにくいので、ホッブズの『リヴァイアサン』を参照します。

人は身体的な差異はあるが、精神的には皆同じで、それはある対象(資源など)への希望の平等を生みます(同じように皆が自分もほしい!と感じること)。

その対象が希少であれば自分以外の人間を制圧するしかなく、この時点で皆他人を制圧しよう!という動機を持ちます。そして、「万人の万人に対する闘争」が出現する、と考えます。

 

この人の部分を国家に置き換えて考えるとわかりやすいです(多分)。

国家を存続させるためには、資源が必要となります。もちろん、他の国家も同じ目標を持ち、資源を欲します。そこで、他の国家を制圧し、資源を獲得し競争に勝利しようという動きが現れます。競争の勝者は他者(=他の国家)とのルールを作ります。

 

3 カントの世界

猪口は'カントの世界は壮大な理想主義の世界。

民主主義、自由貿易、国際組織を拡大進化させる。そうすると、国家の行動には被支配者の同意が必要になり、問題解決手段としての戦争は減る。そして国際組織が発展し網の目のように張り巡らされれば、軍事力ではなく調停や交渉によって問題解決が図られるようになる。'としています。

個人的には、かなり理想主義的だと感じます。

また、カントは他に国家を人格とみなし、それには2個の傾向が見られる、と考えます。その人格には「欲求」と「道徳法則を自分に課そうとする理念」が備わっており、国家はそれらに基づき行動をします。

また最終的には、戦争をなくすためには国際的な平和連合を創設する必要があり、これが世界平和を実現すると言います。一方でそれはすぐには実現できない、とも言います。

まとめ

21世紀現在、上記以外の見方も存在します。

構造主義フェミニズム国際関係論、批判理論、英国学派と呼ばれる見方などで、これらもできれば読み進めたいと思っています。

しかしリベラリズムとリアリズムは未だ主流の見方であり、これらを知ることは現在の国際関係論を学んでいく上で最も基礎的だと言えそうです。

将来的には、上で挙げた構造主義フェミニズムについても触れたいですね。

それでは、今回はこの辺で終わりとします。